2月1日、衆議院本会議は「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案」を賛成多数で可決した。決議は、新疆ウイグル、チベット、内モンゴル、香港等を取り上げ、①深刻な人権状況に象徴される力による現状変更は国際社会への脅威と認識し、深刻な人権状況について説明責任を果たすよう強く求める。②人権状況を把握するため事実関係を情報収集すべき。国際社会と連携し、人権状況を監視し救済するための包括的な施策を実施すべきである、としている。明らかに中国を狙い撃ちにした「中国非難決議」だ。
中国最大の祝日である春節当日に、また北京オリンピック開幕を3日後に控えたタイミングで対中非難の声を挙げるという、政治的悪意に満ちたものだ。さらに今年は日中国交正常化50周年の年にあたる。このタイミングで国権の最高機関である国会が中国に対して事実に基づかない誹謗・中傷、非難を行うことは、日中関係に重大な打撃を与えずにはおかない。
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われわれは決議の撤回を求める。日中平和と友好協力関係に敵対することに反対する。
第1に、決議は対中戦争の準備だ。そして、新疆ウイグル、チベット、内モンゴル、香港を名指しして中国の国家分裂を煽っている。公然たる内政干渉である。新疆ウイグル自治区の「人権」を世界中にばら撒き始めたのは米国だ。「台湾有事」で対中戦争を仕掛け、西側の同盟諸国をかき集めて、戦争挑発を繰り返し、日本もそれに同調している。米議会で同様の決議を挙げ、外交ボイコットで緊張を煽ってきた。これまでも、米国はアフガニスタン、イラク、シリア、リビア等々で「人権侵害」や「独裁」を口実に戦争を仕掛けてきた。難癖、ウソやでっち上げで他国に干渉、介入し、戦争を仕掛けるのは米国の典型的なやり口である。今回の決議は、米国の侵略戦争の常套手段のやり方に日本も参加しようというものだ。
第2に、これから「事実の情報収集をすべき」としていることだ。全く本末転倒という他ない。非難決議を先に出してから「事実収集」とは、「事実かどうかは分からないが、とにかく中国を非難する」とは、いったいどういうことか。われわれはすでに「ウイグル・ジェノサイド」、「香港問題」、「台湾有事」などについて、西側政府・メディアのデマ宣伝を暴露してきた。ところが、決議は事実の確認もせずに一方的に非難しているだけだ。中国に対する重大な誹謗中傷だ。また、決議は「国際社会から・・・人権状況への懸念が示されている」とし、国際的な合意があるかのように書く。しかし、昨年10月の国連総会で日米欧など43か国が新疆ウイグルの人権侵害への懸念を表明したが、他方でキューバなど62か国が内政干渉であるとして反対の立場をとった。「中国の人権侵害」を主張するのは国際社会では少数派で、米国など一部の国に過ぎない。
第3に、日本の人権侵害状況があまりにもひどい。他国の人権侵害を非難できる資格などない。国内の外国人労働者に対する人権侵害、ヘイトクライム、在日朝鮮人・韓国人に対する差別、女性差別、部落差別、非正規労働者への賃金や労働条件での差別等々の問題で、与野党が国会で正式に決議し、解決に向けて立法措置をとっただろうか。そもそも過去のアジア太平洋諸国に対する侵略と植民地支配の謝罪も補償も終わっていない。とりわけ韓国の元日本軍慰安婦や強制労働の被害者たちに対して居丈高に居直り、朝鮮民主主義人民共和国に対しては一切の謝罪も補償も行っていないことを真剣に反省すべきである。自国の数えきれない、全く解決もしていない、ますますひどくなる一方の人権侵害を棚に上げて、事実に基づかない主張で中国を非難することなど許されない。
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深刻なのは、この露骨な決議に、与党の自公だけでなく、維新、立憲民主、国民、日本共産党など野党も賛成したことだ。日本共産党は、中国政府による深刻な人権侵害に対する非難決議とすべきだと露骨に右から政府を攻撃した。自民党の主張とまったく同一だ。あきれる他ない。れいわ新選組は決議に反対した。国会は米国のアフガニスタン、イラク等での虐殺や人権抑圧を非難しなかった、ダブルスタンダードだと批判する。しかし、事実に基づかないで「中国の人権侵害」を名指しで非難すべきだという点では全く同じだ。野党の仕事は、自民党と一緒になって対中戦争準備に加担することではない。自公政権と対決し、日中平和・友好協力関係を今こそ強化すべきであって、対中軍拡、対中戦争準備と闘うことだ。
2022年2月6日『コミュニスト・デモクラット』編集局