COP30ベレン会議:
脱炭素化進む社会主義中国
気候資金」を拒否する帝国主義
再生可能エネルギーを軸に排出量の抑制から削減へ進め

国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)がブラジルのアマゾンの玄関口ベレンで開催された。いったい誰が気候危機を促進し、誰が真剣に食い止めようとしているのか。COP30は、社会主義中国と帝国主義の間の体制的な優劣を鮮明にした。帝国主義諸国は戦争に躍起となり、財政を気候対策ではなく超軍拡・軍事費倍増に費消し、気候対策をサボタージュしている。以下、COP30をめぐる階級諸勢力の動向を概観する。            

(SK)

気候危機は破壊的段階へ

 気候危機は破壊的な段階に入った。海面上昇と島嶼諸国の水没、海水温上昇による台風・ハリケーンの頻繁化・巨大化とサンゴ白化現象、熱波や山火事の異常な増加、極端な嵐や壊滅的な洪水、干ばつや砂漠化の拡大、氷河の崩壊、野生生物の生存の危機、等々。
 これらは、農業・漁業・林業などに打撃を与えることで、一方で、農業に依存する途上諸国経済を危機に陥れ、水紛争のリスクを高める。他方で、先進諸国でも農産物・海産物の不作を引き起こし、インフレ・物価高を招き、労働者・人民の生活を直撃している。気候危機の打撃と被害は階級的性格を持っているのだ。
 このまま放置すれば、本当に「回帰不能点」を超えてしまう。今世紀末までに約2.5℃の温暖化が見込まれ、パリ協定は1.5℃の目標を掲げた。だが、すでに2024年に1.55℃と単年で初めて1.5℃を上回った。待ったなしだ。再生可能エネルギーを軸に排出量抑制から削減へ向かう必要がある。

「人民サミット」に7万人が結集
多国籍企業と帝国主義を糾弾

 COP30会場の外から気候正義運動が圧力をかけた。先住民を先頭に農民、漁師、持続可能な森林採取で生きる伝統的な人々、貝類採取者、都市労働者、労働組合員、ホームレス、女性、LGBTQIAPN+コミュニティ、若者、アフロの子孫、高齢者など7万人以上の人々がデモ行進し、「人民サミット」に結集した。「サミット宣言」の冒頭は、資本主義的な生産様式こそが気候危機の主な原因だ、環境的人種差別に反対、鉱業・エネルギー・武器・アグリビジネス・ビッグテックなど巨大多国籍企業への糾弾だ。「提案」の冒頭は、偽りの市場解決策に立ち向かえ、空気・森林・水・土地・鉱物・エネルギー源は人民の共有財産だ、私有財産として収奪するな、だ。気候危機の元凶は資本主義・帝国主義と金融資本にあることを暴露する。

気候正義のために連合することは先住民と農民の
同一目的
https://peoplesdispatch.org/

多くの欠点があるが、「希望の一歩」

 パリ協定から10年が経ち、脱炭素化は重大な分岐点にある。COP30は決裂寸前となったが、日程延長でかろうじて「合意文書」が採択された。しかし、脱炭素化の「工程表」で合意できず、「化石燃料からの脱却」という文言までもが消え、途上国への「気候資金」の3倍目標も「努力目標」に後退した。全ての懸案事項は来年のトルコ・アンタルヤのCOP31まで先送りとなった。だが、これをもって会議を全否定するのは誤りだ。喜ぶのは米や西側帝国主義諸国、多国籍企業だ。
 メディアは、「工程表」を中国・産油国を含む途上国グループが反対したとねじ曲げる。しかし、中国は口先だけの「工程表」ではなく、「共通だが差異ある原則」に基づく先進国のより急激な削減と「気候資金」を要求したのだ。
 戦闘的な環境団体や気候正義運動は、否定面を厳しく非難しながらも、「不十分だが希望の一歩」「限定的だが重要な勝利」と評価した。活動家が指摘する成果は2つある。一つは、「ベレン行動メカニズム」という「公正な移行メカニズム」だ。これは気候正義運動が要求してきたもので、誰も取り残さない公正・公平の原則、労働権・人権・環境権・事前同意、被差別グループの包摂などの原則を闘いで勝ち取ったのだ。もう一つは、先進国が途上国に気候資金を提供する会議が正式に設置されたことだ。要するに、今後の闘いの手段と舞台を勝ち取ったのである。

帝国主義戦争は気候危機最大の原因の一つ

 今年のCOP30は、世界中でネオファシズムと帝国主義戦争の嵐が吹き荒れる中で開かれた。米帝国主義はNATOを使ってロシア打倒のウクライナ「代理戦争」を、イスラエルと共謀してガザ大虐殺戦争を、アジアでは日本を先兵に対中戦争準備を加速している。高市発言はそれを露わにした。
 影の主役は欠席した米国のトランプだった。それは石油・ガス産業の優遇とパリ協定離脱の張本人というだけでなく、まさに今、石油資源強奪のためにベネズエラに侵攻する軍司令官という意味でもそうであった。会場はラ米カリブ諸国のトランプ批判の場となった。コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は「トランプ氏は反人類的だ」と非難し、石油・ガス依存から脱却した世界経済の構築を求めた。主催者であるブラジルのルーラ大統領も「気候変動に関するフェイクニュース」とトランプを批判した。
 米=イスラエルのガザ大虐殺戦争は「エコサイド」と呼ばれ、石油をがぶ飲みする帝国主義戦争は気候危機の最大の原因の一つだ。そして戦争と軍事費増は、財政危機の中で気候対策予算を奪う。気候正義運動と反戦運動は結合されねばならない。

先進国が「気候資金」を再び拒否
途上国を収奪するな

 本会議最大の欠陥は、先進帝国主義が「気候資金」を拒否したことだ。産業革命以来の膨大な排出量で気候危機を引き起こしたのは先進国である。米国は「歴史的な最大の排出国」だ。だから「共通だが差異ある責任」が原則となる。中国を含む新興・途上諸国の成長と排出はここ数十年であって、「共通の責任」はあるが、根本的・歴史的な責任は先進帝国主義にある。
 「公正な移行」「差異ある責任」の最大の対立点が「気候資金」(先進国が途上国の気候変動対策資金を助成すること)だ。会議は毎回これで帝国主義と新興・途上諸国が対立する。今回、2035年までに公的資金から年3千億ドル(公的・民間計1・3兆ドル)が提案された。だが、2015年のパリ会議で2020年以降、年間1千億ドルの拠出が約束されたが、「空手形」に過ぎず、実際の援助額は280~350億ドルに留まる。残りは融資であった。つまり、帝国主義と金融資本は全くやる気がない。それより民間融資で途上国を債務奴隷にしているのだ。高利貸し帝国主義、高利貸し金融資本である。
 また、帝国主義諸国は気候資金と無関係なものを政府開発援助(ODA)として計上している。名目をすり替えているのだ。日本のODAは利子付で返還義務がある融資の比率が高い。日本は政府と金融資本の二重の利子収奪をしているのである。
 「気候植民地主義」反対。「気候資金」に民間投融資、ODAを含めるな。気候資金を帝国主義による途上国収奪の道具にするな。

社会主義中国は目標を前倒し達成
南南協力で対策を推進

 社会主義中国は今回初めて「絶対的な削減目標」を設定し(7~10%と10億~15億㌧)、グローバル・サウスのリーダーとして登場した。計画通りに排出削減を達成し、口先だけのEUに実績を突き付けた。途上国を「気候基金」で債務奴隷にするやり方を排除し、グリーンテクノロジー(太陽光パネル、大型蓄電池、電気自動車)を供給し「南南協力」「WIN―WIN協力」で脱炭素を世界に広げている。国連やIMF・世銀の改革と同様、COPをも改革しようとしているのだ。
 同国のCO2排出量は、2024年3月に予定の2030年よりも早くピークアウトし、横ばいから減少へ移行しつつある。2025年1~9月で太陽光発電240ギガワットと風力発電61ギガワットを達成し、年間で再生可能エネルギーの新記録を達成する見込みだ。電力需要の伸びが2025年上半期の3.7%から6.1%に増加したが、2025年第3四半期の太陽光発電による発電量が前年比46%増、風力発電による発電量が11%増となったこともあり、電力部門のCO2排出量は、第3四半期は横ばいだった。

再生可能エネルギーの大幅拡大を
石炭火力・CCS・原発反対

 今、日本政府がやるべきは、再生可能エネルギーを軸にエネルギー政策を根本的に転換することだ。しかし高市政権はこれに逆行している。老朽原発の再稼働を次々と強行している。今年2月、エネルギー基本計画から「原子力依存度低減」を削除し、「最大限活用」に転換した。高市は「高支持率」を背景にこれを一挙かつ強引に推進し始めたのだ。
 高市首相はまた、トランプの「気候危機は詐欺」発言を事実上容認し、「工程表」策定に反対した。政府・財界は次々と再生可能エネルギーから撤退している。一方で、化石燃料からの「脱却」を「移行」にねじ曲げ、火力発電でのアンモニアと石炭の混焼や石炭火力とセットにしたCCS(二酸化炭素の回収・貯留)など、石炭火力推進を正当化している。
 加えて対中戦争準備だ。準備の段階でも武器製造や演習におけるCO2排出がある。軍事費の増大により気候危機対策に必要な資金が失われてしまう。実際に戦争が勃発すればその損失は計り知れない。対中戦争反対、軍事費を大幅削減し途上国への投融資でない真の気候危機対策に回すよう訴えていこう。

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