ドイツ軍国主義復活
徴兵制反対の「高校生学校ストライキ」
来年3月に第2次学校ストライキを計画

弾圧に抗して全土で5万5千人が決起

 ドイツ帝国主義は軍国主義復活に踏み出した。12月5日、ドイツ連邦議会は「徴兵制」に道を開いた「軍務近代化法」を、CDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)とSPD(社会民主党)を中心に54%の賛成で可決したのだ。反対した緑の党も極右AfD(ドイツのための選択肢)も、より過激な徴兵制を要求する反対であった。兵員不足になった場合、議会が「兵役の義務化」を決めるという条項が盛り込まれた。
 真っ先に立ち上がり、反対運動の先頭に立ったのは高校生たちであった。実に全国の95都市で5万5千人以上の生徒が学校ストライキを組織し、街頭に進出したのだ。ストライキ委員会を結成し、デモを準備し、署名運動を組織し、クラスメートを動員した。個々の学校で始まった取り組みは全国的なストライキへと発展した。
 キールからミュンヘン、ゲッティンゲンからポツダムまで、多くの教室が空っぽになった。ミュンヘンは2千人以上、ベルリンでは1万人以上、ハンブルクでは5千人、ドレスデンでは3千人が街頭に出た。そのほかにキール、シュトゥットガルト、ケルンなどの主要都市でも、数千人の若者がデモを行った。
 参加者たちは教育省、学校管理者、議会当局からの弾圧や脅迫に抗してストライキに入った。生徒は学校の管理室に閉じ込められ、自由を奪われた。学校側は休憩を屋内に限定し、外に出るのを阻止した。ライプツィヒでは、メルツ首相に連邦軍への入隊を呼びかける横断幕を掲げた2人の生徒を警察がデモから暴力的に引き離した。ハンブルクでは警察がデモを禁止した。ロストックでは、議会当局が単独で登録デモを午後1時、つまり放課後に延期させた。
 多くの場所で、生徒たちは保護者や教員、例えば教育・科学労働組合(GEW、30万人)によって支援され、ドイツ平和協会・良心的兵役拒否者連合(DFG―VK)や個々の労働組合支部など、多くの組織も連帯を表明した。生徒たちは、平和に生きる権利はどうなるのだ、軍事訓練や戦争の代わりに強制のない生活、良い教育と職業訓練、そして将来の機会を望んでいるのだと訴えた。
 

「兵役義務にノーを」の横断幕
https://peoplesdispatch.org/

ドイツ共産党(DKP)とその青年組織(SDAJ)は全力を挙げて「学校ストライキ」に参加し支援した。

高校生が反対運動の先陣を切ったのはなぜか?

 高校生が焦眉の、しかも重大な政治課題で闘争の先頭に立ったのはなぜか? 一言すれば政府の強引さだ。連邦議会は高校生の全く手の届かぬところで、2008年生まれ以後の若い男性を徴兵することを決定した。この新法は早速26年1月から施行され、すぐに徴兵制への政府の取り組みが始まり、現在中等教育課程にある生徒が来年から毎年次々と直接の徴兵対象者とされていく。彼らは、高まるドイツ軍国主義の戦後最初の犠牲者にされていく危険を痛感したのだ。
 政府閣僚と金融資本は、徴兵制を「暫定的な志願制」でごまかそうとしている。政府は18歳の男性全員に2026年初頭から「動機と適性」判断アンケートを配布する(男性の回答は義務、女性の場合は自主回答)。この法律の計画は、2035年までに現役兵士数を18万3000人から25万5000人、27万人に増加させることだ。さらに20万人の予備役が追加される予定だ。ここには、あらゆる年齢と性別の兵役を求めた緑の党や、「200年の伝統」あるドイツ連邦軍を夢見たAfDの意見が既に反映されている。
 政府は若者の貧困や絶望を利用する試みを浸透させている。通常の職業訓練生の給料では生活が困難な現状にある。そこに、新しい義務的な兵役制度の3500ユーロの運転免許補助金と約2000ユーロの給与を付けて、軍隊へと誘導する目論見だ。
 高校ストライキ委員会は、2026年3月5日、第2回の学校ストライキを全国に呼びかけた。
 ドイツ政府の徴兵制導入を可能としたのは、ウクライナ戦争以降、政府・与野党・メディアが煽動した反露・嫌露プロパガンダだ。他人事ではない。日本での反中・嫌中プロパガンダの危険を示唆するものだ。一部左翼・共産主義者の反中・嫌中イデオロギーが、同じく徴兵制と対中戦争と軍国主義への道を掃き清めることを肝に命じるべきだ。           

 (渉)

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