米帝「三正面戦争」の戦争構造を暴く(連載その5・完)
米帝国主義の絶え間ない侵略と虐殺の歴史
計り知れない数の犠牲者と避難民

 この連載は、その1で「超巨額の軍事費 米軍産複合体の異常な源泉」、その2で「戦争で暴利を貪る米国の軍産・核・金融複合体」、その3で「デジタル軍産複合体と恐ろしい『自動化競争』 核戦力の近代化と核産業複合体」、その4で「最大の軍事基地帝国アメリカ 戦略要衝に張り巡らされた米軍海外基地」を取り上げた。今回は連載の最終回として、建国以来、途切れることなく続けている戦争と軍事行動、それがもたらす犠牲者の規模と実態、軍事覇権を維持するために国際法を無視し軍縮に敵対する米帝の姿を描き出す。米帝の「三正面戦争」を阻止することこそが、今日の反戦平和運動の喫緊の課題であることを確認する。

(編集局)

建国以来絶えず戦争をしている国アメリカ合衆国

 トランプ米大統領は来る2026年を「建国250周年」として「この国の歴史上最も偉大な一年にする」と宣言した。この計画は自国が手を下してきたアメリカ先住民虐殺をはじめ、全地球上に押し広げている侵略と拡張の歴史に蓋をして、「愛国主義」と「白人優先主義」で飾り立て、その犯罪性を覆い隠すものとなるだろう。現に、ワシントンDCの大通り上に描かれていた「BLACK LIVES MATTER(BLM=黒人の命は大切だ)」の文字がこのイベント開催のために今年3月に消し去られたことがこのことを象徴している。イラン、パレスチナに対してイスラエルと共謀し破壊とジェノサイドを続け、民族浄化を推し進めているのもこの国だ。

 米国の249年余の歴史の中で、戦争をしていない年は20年にも満たない。その戦争国家は次のように要約される。
――1945年の第二次世界大戦終結から2001年までに限っただけでも、世界の153の地域で248件の武力紛争が発生し、そのうち201件は米国が引き起こしたもので、実に約81%を占める戦争国家そのものである。※1
――建国の1776年にまで遡れば2019年までの間に、米国は世界中で392回以上の軍事介入を行い、これらの半数は1950年以降に実行され、その25%は冷戦後であり、米帝の軍事介入は一極覇権の上に立った1991年以降で明らかに加速しているのだ。※2

※1 「米国の軍事覇権の起源、事実、危険性に関する報告書」(新華社/2023年)
https://www.chinadailyhk.com/article/349988#Full-text:-The-Report-on-Origins-Facts-and-Perils-of-US-Military-Hegemony

※2 「軍事介入プロジェクトの紹介:1776年~2019年までの米国の軍事介入に関する新しいデータセット」
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00220027221117546?icid=int.sj-full-text.citing-articles.1

 まずは米帝を頭とするグローバル・ノースの国々が他の国と地域に対して繰り返してきた侵略の全体像を概観してみる。
 まず「図1」を見てもらいたい。「米国が認める海外での武力行使」の全体像である。見事に自国を含む数カ国を除いて黒く塗りつぶされている。米国議会調査局CRS(米国の公式出版物であるため、ここには秘密任務は含まれていないことに注意が必要だ)のデータによるが、米国の軍事力は1798年から2023年の間では、101の国と地域に行使されてきたのである。

 次に「図2」は、2022年だけをとった「グローバル・ノース軍のグローバル・サウスへの展開」を示す地図である。これを見れば、依然としてアフリカと西アジアがグローバル・ノースの謀略のターゲットであることが分かる。グローバル・サウス諸国に対する全体で317回を数える軍事展開のうちで、国連加盟国に対するのは225回を数え、その内訳は対マリ(31展開)、イラク(30)、レバノン(18)、中央アフリカ共和国(13)、南スーダン(13)を数える。
 次に「図3」は、2022年だけをとった「グローバル・ノース軍が展開した作戦数」である。グローバル・ノース諸国への軍事展開137回を加えた全454回のうちで国連加盟国に対するのは409回を数え、その最も多くの軍事作戦を展開した帝国主義国家・首謀者は、やはり米国(56回)、次いで英国(32)、仏(31)、伊(20)、独(17)、スペイン(15)、カナダ(13)、オランダ(13)である。この米帝の他国への侵略行為を可能にしているのが、地球を覆い尽くす米軍事基地網なのである。

※3 「ハイパー帝国主義:危険な退廃的新段階(1)」
https://thetricontinental.org/studies-on-contemporary-dilemmas-4-hyper-imperialism/#toc-section-1

戦争と虐殺で領土を拡大し、軍事覇権を確立

 米国は1776年の独立以来、「西方拡大」を開始し、絶えず力による領土と覇権の拡大を追求してきた。戦争と軍事作戦は、米国が軍事的覇権を確立し維持するための最も直接的な手段である。

 米墨戦争(アメリカ=メキシコ戦争、1846~1848年)は、他国の一部を占領した最初の軍事作戦だった。現在のカリフォルニア、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、コロラド、ワイオミング州の一部をメキシコは米国に割譲し、領土を拡大した。

 米西戦争(アメリカ=スペイン戦争、1998年)では、スペイン艦隊を破り、フィリピン、グアム、プエルトリコを含む旧スペイン植民地のほとんど全てを奪い取り、同時にハワイを併合し、キューバを保護国として事実上支配下に置いた。植民地の再分割を通して、米国は初めて北米以外の西半球や東アジアに支配地域を拡大した。

 これに続く米比戦争(アメリカ=フィリピン戦争、1899~1902年)は、米西戦争で手に入れたフィリピンの独立軍との間の戦争である。米国は、米西戦争で、スペインからの独立を闘う指導者に、勝利の暁には独立させると約束して背後からスペイン軍を襲わせた。しかし戦争後には、フィリピン独立の約束を反故にして植民地にし、独立軍2万人、民間人も少なくとも20万人を殺害した。飢饉と病気の死者は100万人に達すると推計されている。この戦争中に米国は、報復、焦土作戦、強制移住など、数多くの残虐行為を行った。
 戦争を通じて、米国は領土を拡張し、戦略的要地を占領し、勢力圏を拡大するテコを手に入れてきたのである。建国当初の米国領土は約80万平方㎞だった。これが現在では約937万平方㎞と、10倍以上に拡張させてきたのがこの国だ。

 パナマ運河の建設を強行し、中国における権益を他の帝国主義国と分割し、アフリカに軍隊を駐留させ、軍事行動によって重要資源や物質を自国のものにしてきた。第2次世界大戦で米国は自国から遠く離れた太平洋とヨーロッパの2つの戦線で戦って、戦後強大となった唯一の国だ。こうして米国の軍事覇権は、戦争で形成され、戦争で拡大してきたのである。

 第2次世界大戦終了時には、ソ連社会主義を次の戦争相手と想定した。欧州とアジアで米軍の軍事力で支配圏を確保し、同盟国と軍事同盟NATOを手に入れ、後に冷戦に突入するなかで世界を分割し自分の勢力圏に囲い込んだ。さらに対ソ軍拡戦争を仕掛けることで熱戦にこそならなかったが、ついにはソ連を崩壊させた。
 朝鮮戦争(1950~1953年)では、米国は12カ国以上を集めて「国連軍」(マッカーサーが司令官)を結成して朝鮮半島の内戦に介入した。この戦争で340万人以上の民間人が殺され、約300万人が難民となった。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の統計によると、戦争により約8700の工場、5000の学校、1000の病院、60万の世帯が破壊され、200万人の子どもたちが避難を余儀なくされた。米軍は戦時中、朝鮮北部地域と中国東北部の一部で秘密裏に細菌戦を行い、ペスト、コレラ、腸チフスを引き起こす可能性のある細菌を含む大量の昆虫、ネズミ、ウサギ、その他の媒介生物を飛行機で拡散させたのだった。

 さらに1950年7月には米軍による韓国民間人の虐殺事件=ノグンリ(老斤里)虐殺事件を起こしている。これは、「戦闘地域を移動するすべての民間人を敵とみなし発砲せよ」という第25師団長キーン少将命令に基づき行われた。なお、朝鮮戦争中に行われた米軍の民間人虐殺はこれ一件に留まらない。収監されていた1000人以上の政治犯を軍命で処刑(=殺害)している。同様に、ベトナム戦争でのソンミ村虐殺、イラク戦争での囚人虐待、いわゆる〝対テロ戦争〟での無人機による罪のない民間人の無差別殺戮など、対外紛争で明らかとなっただけでも米軍は数多くの残虐行為を引き起こしている。

 生物・科学兵器の使用においては、米国の歴史はなおさら悪行にまみれている。先述の朝鮮戦争以外でも、ベトナム戦争で2000万ガロンの枯れ葉剤を投下してベトナム人40万人を死亡させ、ベトナム人約200万人を癌などの病気にさせたこと、コソボ紛争やイラク戦争で化学兵器や劣化ウラン弾を大量使用して数多くの死傷者を出し、現在も被害が続いていることなどが挙げられる。米国はこれら戦争犯罪の真実を押し隠してきたのである。
 トランプが「(イラン核施設への)あの攻撃が戦争を終わらせた」に続けて、広島と長崎になぞらえて「戦争を終わらせたということは本質的に同じだ」と厚顔にも述べたが、この暴言は原爆投下を正当化するものであるばかりか、本質において、核兵器を頂点とする軍事支配に依存する米国の歴代政治支配層に共通する。米国は戦争で核兵器を使用した唯一の国であり、広島と長崎に原爆を投下し、軍事覇権の重要な基礎を築いた。その後、冷戦時代には〝共産主義の拡大を封じ込める〟ために起こした朝鮮戦争とベトナム戦争でも核兵器使用が俎上に上った。「米国の持つ最大の武器を使うことは、積極的に考慮された」(1950年、トルーマン大統領)。「テト攻勢」から米軍基地を防衛するために、沖縄に配備されていた核兵器が検討された。「核兵器使用のための緊急計画が沖縄で準備されている」(1968年、シャープ太平洋軍司令官)。いわゆる「キューバ危機」(1962年)での核使用はギリギリのところで回避された。これら米ソ対決の過程を通して、米国は軍事予算の大幅な増大による通常兵器と核兵器の開発と配備(1967年の米占領下の沖縄には1300発の核兵器が配備され、アジア太平洋での最大の核貯蔵庫といわれた)、軍事基地網の世界中の構築を追求してきたのである。

 米国はモンロー主義を唱えて、中南米、カリブ地域を自分の「裏庭」と考え、頻繁に軍事介入とクーデターを繰り返した。第2次大戦後もグアテマラ、キューバ、エクアドル、ブラジル、ドミニカ、チリ、ウルグアイ、ニカラグア、グレナダ、パナマ、ベネズエラなどに対して好き放題に軍事的介入、クーデターを繰り返した。
 「明白なる天命」(マニフェスト・デスティニー Manifest Destiny)は、神が米国民に賦与した使命であり、領土を拡張するのも、己の価値観を広めるのも、みな神のご指示だとする。この利己主義と人種差別主義イデオロギーが、「人々を救うために人々を殺す」ことを可能にする。米国の建国以来、奴隷売買や先住民虐殺をはじめ、20世紀以降の世界支配欲と対外軍事介入に対しても、偽善的な「正当性」と「神聖性」を与え、今日に至っても米国の精神的支柱であり続けている。

 こうして、米国が手に入れた世界覇権は、他国の内政に干渉し、紛争を煽り、多くの民間人を傷つけ、多くの難民を生み出してきたのである。また他国政府を直接転覆させる一連の「カラー革命」の背後には、NED、米国務省、USAID、CIAが密接な関係を持ちながら蠢いている(本紙114~116号「USAIDの犯罪を暴く」参照)。

USAIDの犯罪を暴く(その1)USAIDの「人権」「人道」援助のデマゴギーを暴く階級的目的は親米勢力の育成と反米国家転覆 | コミュニスト・デモクラット

USAIDの犯罪を暴く(その2)巨額の資金を親米メディア構築に投入親米勢力育成と反米国家転覆の大衆煽動が目的  | コミュニスト・デモクラット

USAIDの犯罪を暴く(その3・完)「ならず者国家」アメリカ合衆国の真の姿 世界中で反米政権打倒親米政権樹立に関与 | コミュニスト・デモクラット

米侵略戦争による犠牲者 ~ 戦後少なくとも一千万人を大量虐殺

 上で述べたように米国の軍事作戦のうち第二次世界大戦後が半数を占めており、かつその半数が冷戦後である。この絶え間ない戦争の歴史によって、どれだけの戦闘員と民間人の死者が生み出され、どれだけの人々が避難を強いられてきたか。空爆、砲撃、ドローン攻撃、銃撃戦、そしてレイプが襲い掛かり、家、病院、学校、そして畑や水源、下水、その他インフラなど安全な住宅環境の破壊と飢餓、コレラなど戦争関連の病気などが原因で亡くなったか、あるいは辛うじて逃れることができたか。戦争が人間の命と健康に与える壊滅的な犠牲の有様を明らかにすることは、米帝の侵略と虐殺の犯罪性を暴き出し、与えた膨大な損害に対しての修復責任がこの国にはあることを証明する。

 「表1」は、「米帝の戦争による死者数・避難者数(第2次大戦後)」をまとめたものである。ただし、全ての戦争・介入による結果を数値化することは不可能に近く、またこうした国際的な研究は緒に就いたばかりであることを承知願いたい。

 戦後の一般市民の死者は少なくとも1千万人にのぼり、避難民は4400万人にのぼる。これだけの大量殺戮をやったのは米国だけだ。しかも誰からも処罰されない。それどころか、「自由と民主主義の国」と崇められる。

    

※4 「9・11後の戦争の人的コスト:主要な戦争地帯での直接的な戦争死者」(2021年)
https://watson.brown.edu/costsofwar/files/cow/imce/papers/2021/Costs%20of%20War_Direct%20War%20Deaths_9.1.21.pdf

※5 「9・11後の戦争における間接的な死者 死はいかにして戦争より長生きするか」
https://watson.brown.edu/costsofwar/papers/2023/IndirectDeaths  

※6 「難民の創出 9・11以降の米国における戦争によって引き起こされた避難」(2020年)
https://watson.brown.edu/costsofwar/files/cow/imce/papers/2020/Displacement_Vine%20et%20al_Costs%20of%20War%202020%2009%2008.pdf

※7 「第二次世界大戦後にアメリカが始めた戦争の簡単な歴史」(新華社)
https://english.news.cn/20220902/735703a45cfd458791179d4c0a80e727/c.html

 以下は、9・11以降の死者と避難民の数である。

――2001年の9・11以降の米国の軍事作戦による死者数は少なくとも450万人から470万人に上る。
※4と※5の、ブラウン大学に拠点を置く「Costs of War(戦争のコスト)」プロジェクトが発表した報告書は、2001年の9・11以降の絶え間ない米国の軍事作戦=「対テロ戦争」による死者数を推定している。それは、38万7000人の民間人を含む約92万9000人の直接的な死者をもたらした。加えて、経済、公共サービス、インフラ、環境の破壊は時間の経過とともに遅れて死者数は膨らみ、その間接的な死者の数は360万人から380万人に上ると推定する(ただし正確な死亡者数は不明のままであり、諸文献によっても大きな幅を有している)。

――余儀なく強制された避難民は3800万人に上る。
※6の、同じく「Costs of War」の「難民の創出」は、どれだけの人々が避難を強いられたのかを包括的に測定した初めての報告書である。これによると、2001年以降、わずか8カ国(表1の④~⑪)で少なくとも3800万人が避難を余儀なくされたと推定する。ただし、「この数字は非常に控えめな推計であり、4800万人から5900万人に近い可能性がある」とこの報告書は留保をつけている。これらの膨大な数の避難民は、カリフォルニア州のほぼ全員、またはテキサス州とバージニア州の合計に相当する人数だ。また、カナダ一国の人口にも匹敵する規模だ。ソマリアの人口の「46%」をはじめ2割から3割に避難を強いるとは、国家そのものの破壊をもたらしたのと同様ではないか。
 さらに、この避難民の推定も、米軍が関与した「対テロ戦争」の他の紛争で避難した人を含んでいないことから控えめな数字だ。ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ民主共和国、ケニア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、サウジアラビア(イエメン戦争関連)、南スーダン、チュニジア、ウガンダなどの国に対し、依然として米軍は、戦闘部隊を派遣し(多くの場合、欧州同盟軍とともに)、ドローン攻撃と監視・軍事訓練を行い、武器販売など「対テロ」作戦を理由に、軍事作戦を展開している。これらの紛争の多くでは、死者や避難民を絶えず生み出してはいるが、その実態は解明されていないのである。

国際法を蹂躙し自国帝国主義利益を最優先する米国

 戦争で形成され、戦争で拡大し、戦争で支配する。これこそが、米帝が過去249年の間に軍事覇権の頂点に立ってきたやり方である。戦争によって、米国は領土を拡大し、軍事介入、クーデター、代理戦争によって、米国はラテンアメリカやカリブ海諸国を「裏庭」として扱い、中東やその他のユーラシア諸国を地政学的に支配してきた。戦争を遂行し、封じ込め戦略を実施し、いわゆる「平和的進化」と「カラー革命」を企てることによって、他国の内政に干渉し、紛争を作り出し、世界平和を深刻に脅かしてきた。

 また、米国は同盟国を「安全保障」の名の下に結束させてきた。米国は世界中に軍事的触手を伸ばし、現在、少なくとも世界96の国と地域に904の海外軍事基地を展開している。国連加盟193カ国のうち、約175カ国に米軍が駐留している(本紙114号 連載その4「最大の軍事基地帝国アメリカ」参照)。
 だが、この軍事同盟は国家間の階層システムを内包している。米国が軍事行動計画を設定し、覇権を行使し、他国はこれにつき従う非対称的な関係なのである。

 これと根を同じくするものが、海外に駐留する米軍関係者に付与されている治外法権的特権である。米軍は軍事侵略を繰り返すだけでなく、駐留先では人権侵害や暴力行為、さらには性暴力などの凶悪犯罪を引き起こしている。しかし、2024年の日本国内で発生した米軍関係者による事件だけを見てみても、一般刑法犯の起訴率は11・8%にとどまる。実に不起訴率は9割だ(起訴13件/不起訴97件)。なかでも性的暴行事件は7件も発生したが、この内訳は、不同意性交等致死傷(起訴2件/不起訴0件)、不同意性交等(起訴1件/不起訴3件)、不同意わいせつ(起訴0件/不起訴1件)だ。他の事件でも、住居侵入(起訴1件/不起訴26件)、傷害(起訴1件/不起訴17件)、窃盗(起訴2件/不起訴24件)と、米軍犯罪は日米地位協定と刑事裁判権放棄の密約に守られ、野放しにされ〝無法状態化〟しているのだ。

 前の参院選では「外国人犯罪による治安悪化」「外国人は優遇されている」といった差別排外主義が煽られたが、これら米軍関係者の凶悪犯罪に何ら触れないのも、その言説たるや、まやかしであることを自ら示している。

 さらに米帝は、他国には「ルールに基づく国際秩序の遵守」を求める一方で、自らは国連などの国際システムや国際法に支えられた国際秩序よりも、自国帝国主義の利益をあからさまに優先する。

 米国は第二次世界大戦後、世界の政治・経済統治のための国際的なルールの確立を主導したが、米国の要求を満たさない国際機関から次々脱退してきた。1980年代以降、国連海洋法条約、反人種差別世界会議、京都議定書など、多くの国際条約や組織の批准を拒否し、一方的に脱退してきた。

 米国は、2001年のブッシュ政権以降、生物兵器禁止条約の検証議定書の交渉に唯一反対した国であり、国際社会が各国での生物兵器の開発を検証する努力を妨げ、生物兵器管理の障害となっている。

 1期トランプ政権は、国連人権理事会(UNHRC)、包括的共同行動計画、中距離核戦力全廃条約など、4年間で10以上の国際機関や協定から脱退した。2期トランプ政権は、 国連人権理事会からも、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からも再度離脱し、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を停止し、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からも、世界保健機関(WHO)からも脱退したのだ。

米帝の「三正面戦争」を阻止しよう

 以上が「自由の国、民主主義の国アメリカ」の正体である。米帝こそが現代帝国主義戦争の最大の推進者であり、真の元凶である。しかし、これは不動で盤石なものではない。今日、米帝を盟主とする西側帝国主義と、社会主義および反米・反帝・反植民地勢力との力関係は、中国が主導するBRICS拡大とグローバル・サウスの劇的台頭によって、後者に有利な歴史的転換の時代に入っている。

 だからこそ、米帝の世界覇権体制が急速に後退し、西側帝国主義の危機が深まるにつれて、その侵略欲・好戦性は歴史的画期をなすほどに高まっている。かつてなく危険な、長期に及ぶ戦争に向かう新しい時代が始まっている。米帝の「三正面戦争」のエスカレーション然り。ウクライナ代理戦争の持続に加え、ガザ虐殺支援、イラン空爆ですでに限界が見えているにも関わらず、対中国戦争を準備し、戦略核での優位追求を開始した。ドイツ・欧州帝国主義は、米帝の衰退を補うだけでなく、独自の帝国主義的衝動を高め、戦争国家へと舵を切った。日本帝国主義も同じ歩調だ。世界の反戦平和運動の課題は、全人類にとって平和・安全・生存を根底から脅かす最大の敵である米帝国主義に矛先を向け、これらの帝国主義戦争を阻止し、終結させること、世界平和の実現である。


(連載・完)

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