極右・ネオファシズム政党の台頭の危険
7月20日の参院選の結果、自民・公明は大敗した。衆参両院で過半数割れし、少数与党に陥った。裏金問題など累積した政治不信、相次ぐ値上げと物価高、米不足、実質賃金の減少など人民生活悪化、雇用悪化が自公政治にNOを突き付けた。
これに代わって伸長したのが極右・ネオファシズム政党だ。外国人排除・排外主義が票になる異常な選挙戦となった。「日本人ファースト」を掲げた参政党は非改選を含めて15議席に躍進した。選挙区で野党トップ、比例区でも国民民主に次ぐ野党第2位の票を獲得した。
参政党はネオファシズム政党である。彼らの「創憲案」は、元首としての天皇の不可侵、国民主権の否定と人権の制限、「日本人」の要件としての血統・日本語・日本を愛する心、外国人の排除規定、教育勅語の復活、「國體」の護持、自衛軍の設置と防諜活動、国防の義務等々を条文化し、戦前の絶対主義天皇制にも通じる。
一方「外国人の過度な優遇見直し」に「尊厳死」法制化も公約に加えた国民民主は9議席から22議席へ倍増以上の議席を得た。国民民主はネオファシズム政党とは言えないが、差別・排外主義に強い親和性を持つ。2つの政党は、10代~30代の若い世代の支持が圧倒的で、40代・50代のロスジェネ世代男性の支持が多いとの調査もある。自民・公明・維新の「既成政党」の票がこの2つの政党へ流れ、さらに「浮動票」が加わったことで、2党の躍進につながった。移民規制や過去の侵略戦争の賛美を主張する保守党も多数の比例票を獲得し2議席を確保した。
若者たちの現状への不満と不信感が、「既成政党」ではなく、ストレートで刺激的な政策を掲げるネオファシズム勢力、極右・排外主義勢力への共感や支持へと流れていったことになる。
差別・排外主義、歴史修正主義、対中戦争準備は一体のもの
与野党の構図が大きく変わり、従来の保守対リベラル、改憲対護憲といった基本的な与野党対決の構図がなくなった。石破首相は、野党との協調、政策連合に自らの延命の道を探っている。自民がネオファシズム政党との協力に舵を切ることになれば、スパイ防止法はじめ、対中戦争準備、医療費削減のための「終末期」医療切り捨て、皇国史観教科書、歴史修正主義、外国人差別と排除などが一層強まる危険性が高まる。
改憲策動にも一層の警戒が必要だ。国民民主・維新に参政も加わり、与野党の改憲勢力は2/3を超える。政権の枠組みがかわり、憲法改定作業が一気に進む危険もでてくる。
過去の日本の侵略と植民地支配、戦争犯罪を否定する歴史修正主義が勢いづいている。「抗日戦争勝利80年」を期に中国で制作された南京大虐殺や731部隊を題材にした映画が標的となっている。差別・排外主義の最大の矛先は中国であり、それはまた対中戦争準備と一体のものだ。ほぼすべての野党が反中プロパガンダに屈服し、対中戦争準備と大軍拡に異を唱えない。軍事費倍増は争点にならない。誤った「中国脅威論」に同調し中国非難を強める日本共産党の責任は特に重い。
大衆運動と世論喚起の強化で排外主義を打ち破ろう
ネオファシズム政党は決して過小評価できない。しかし彼らの弱点・脆弱性も見ておく必要がある。そもそも「外国人問題」はデマと虚構の上に作られていること、南京大虐殺の完全否定など極端な歴史修正主義、時代錯誤的な天皇主義の新憲法案、核武装も視野に入れた安全保障政策等々だ。批判と暴露を強化することで、現状の不満から漠然と支持をしている人たちを引き離すことは可能だ。
闘いはすでに始まっている。参院選のさなか、外国人や難民等の人権問題に取り組むNGOは、「参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明」を発した。日本ペンクラブや在日外国人のコミュニティなども次々と声明を出した。カウンターのスタンディングなども各地で取り組まれた。
排外主義との闘いを強化しよう。「他民族を抑圧する民族は自由ではあり得ない」。パレスチナ連帯と排外主義反対の闘いを結びつけよう。生活悪化や雇用不安をもたらしている本当の原因が、独占資本による収奪と切り捨て、新自由主義政策、軍事費増と戦争準備等であることを説得的に語っていこう。戦争に反対し、平和や人権を尊重し、外国人差別や高齢者敵視を煽るデマを批判しよう。日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を正しく伝え、日本国憲法を擁護する、粘り強い運動と世論喚起を強めよう。
2025年8月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局