「定額働かせ放題」=裁量労働法制拡大反対
高市政権のさらなる労働者酷使による「成長」戦略

高市政権は対中戦争準備と合わせて、一段の労働強化策を打ち出した。高市政権は、「成長」戦略を国内投資の拡大によってではなく、労働者の賃金と労働条件の抜本的改善によってでもなく、もっぱら前時代的な労働強化と労働時間の延長によって実現しようとしている。

裁量労働制と労働時間規制緩和が前面に

(1)最大のメダマは裁量労働制である。裁量労働制とは、働いた時間に関係なくあらかじめ労使で決めた時間だけ働いたとみなす「みなし賃金」を払うものである。「定額働かせ放題」だ。残業代は支払われない。「長時間労働」は時間内に成果を収められない労働者の「自己責任」だとされる。
 裁量労働制は、1988年に導入された。当初は、研究職や新聞記者に限られていたが、90年代から2000年代にかけて会社の企画や立案、調査・分析の業務にも拡大した。
 しかし裁量労働制は、労働組合と過労死遺族団体の必死の闘いによって最小限に押しとどめられてきた。現在は研究や開発など専門業務型の20職種と企画業務型の4つの要件に限定されている。適用を受ける労働者の割合は専門業務型で1.1%、企画業務型で0.3%にすぎない。経営者はこれが不満なのだ。高市首相はそれを一気に拡大し、さらに手続きまで簡素化しようとしている。
 早くも26年1月11日から日本成長戦略会議の下、労働市場改革分科会が厚労省で開催され、「裁量労働制」の拡充に向けた見直し作業が始まった。
 使用者側は、「現在の裁量労働制は対象業務が厳格で手続きも煩雑だと言う。見直しについて必要な議論をすすめるべきだ」「国際競争力の向上や付加価値創出の観点からも裁量労働制拡充が必要だ」などと主張している。

(2)もう一つは残業時間の上限規制の「緩和」である。政府・経団連は「働きたい人がもっと働けるようにする」と言う。自民党は昨夏の参院選公約で「働きたい改革」を打ち出したが、高市氏は新総裁就任時に「ワークライフバランスを捨てる。働いて×5」と宣言し、「労働時間規制の緩和」を打ち出した。現在、労働基準法上は1日8時間1週40時間、原則残業は禁止である。ただし36協定を締結した企業では残業可能。だがその場合も、年360時間、月45時間が上限で罰則付きである。しかし「特別な事情」があり労使が合意する場合はなんと、年720時間、「月100時間未満」まで合法である。この規制をさらに「緩和」したいという信じがたい狙いである。

政府・経団連は一貫して「定額ただ働き」を追求している
 
(1)攻撃はすでに2000年代初頭から始まっている。経団連は2005年6月、「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を行った。また06年には、米政府が日本政府にホワイトカラーエグゼンプション制度導入を要求した。第一次安倍政権は、これらを受けてこの制度の推進に全力を傾けた。
 このときの経団連提言の「適用対象者」は、驚くべきことに「年収400万円か全労働者の平均給与所得以上の者」であった。労働者の半数に適用するというのが彼らの狙いなのである。
 労働者と労働組合は猛反発した。中小企業を主とする労働組合、全労協、全労連は強力な闘争を展開し、連合も反対運動に加わった。過労死弁護団も真っ先に反対決議を出した。闘いは〈政府および財界〉対〈労働者・労働組合〉の全面対決となった。メディアも「残業代ゼロ法案」と報じ、闘争は全面勝利となった。

(2)しかし第2次安倍政権の発足と共にふたたび攻撃が始まった。12年末の総選挙に圧勝して政権復帰した安倍政権は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」、「柔軟で多様な働き方を進めるための規制改革」を打ち出した。これが政権の成長戦略(アベノミクス)のいわゆる「第3の矢」の中心であった。
 このときは全労協・全労連などが「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」(雇用共同アクション)を結成し、連合も「労働者保護ルール改悪阻止闘争本部」を設置して闘った。だが労働者側が身構えていた「ホワイトカラーエグゼンプション」の再提案はなされなかった。

(3)16年、安倍政権は「働き方改革」を看板に労働強化策を打ち出した。だが不人気の「ホワイトカラーエグゼンプション」は表に出さなかった。しかし内容は全く同一の「定額働かせ放題」法案であった。3通りの形態で実現を目指した。①「高度プロフェッショナル制度」、②「裁量労働制」の拡大、③過労死水準を超える残業時間の合法化である。
 18年に①は実現し、③は月100時間まで合法化されたが、②は撤回に追い込まれた。

究極の労働強化策「定額働かせ放題」を葬り去ろう!

 高市政権は、先進国で最悪水準の長時間労働、深刻な過労死の実態を覆い隠し、たえず「もっと働きたい人もいる」と述べて、またも「定額働かせ放題」実現に邁進している。

(1)しかし過労死は依然として深刻な問題である。過労死等の労災請求件数は20年度の2835件から24年度の4810件に増加し、支給決定件数は802件から1304件に増加している。過労死は、脳・心臓疾患による死亡67件、精神障害による自死88件にのぼる。
 公立小中学校教職員では、15年~24年度の10年間に38人の過労死が認定されている。
 日本で過労死が深刻で後を絶たない根源は、フルタイム労働者の労働時間が欧州諸国に比べ年間300時間程度も長いことにある。
 25年7月、過労死遺族らは、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会報告書」と、それを受けた政府の労働時間規制見直しの動きに対して強力な抗議を行った。遺族らは「時間外労働に罰則付き上限規制を設けた「働き方改革」に逆行する「働かせたい改革だ」と指摘し、「過労死した方々を冒涜する行為だ」と訴えた。

(2)高市首相は、労働時間の延長が労働者自身の希望であるかのように発言し、「働きたい改革」を推進している。しかし、これは「デマ」だ。
 このようなやり方には最悪の前例がある。18年、安倍首相は「裁量労働制の方が労働時間が短いというデータもある」とウソの答弁を行った。この根拠は厚労省の「2013年度の労働時間等総合実態調査」による比較しえないデータのでたらめな「比較」であった。これは大問題となり、裁量労働制拡大は破綻した。
 厚労省が19年にあらためて提出した資料では裁量制による過重労働が明白だ。週60時間以上働いている労働者の割合は裁量労働制で9・3%、裁量労働制以外の労働者は5.4%、実に1.7倍だったのだ。同調査では「裁量」の実態も明らかになった。「業務の遂行方法、時間配分等」についての労働者の裁量は9割だが、「仕事の内容・量」については約3割で上司が決めていた。
 労働者の希望については総務省「労働力調査」(24年)がある。それによれば就業時間を「増やしたい」とする労働者の割合は、週40時間以上働く層では約3%にすぎない。これに対し、「減らしたい」とする割合は週40~48時間の労働者で約2割、週60時間以上では4割を超えている。あまりにも当然のことだが、労働者は長時間労働を望んでいない。
 厚労省の労働条件分科会(26年3月)に提出された資料もある。25年10月実施の「労働時間等に関する労働者の意識・意向アンケート調査」である。労働時間を増やしたいは10.5%で、このままで良いは59.5%、減らしたいが30・0%だ。しかも増やしたいと答えた41.6%がその理由を「たくさん稼ぎたいから」、15.6%が「残業代がないと家計が厳しいから」と回答している。雇用形態別に見れば、増やしたい人は正規7.3%、パート18.6%、アルバイト16.8%である。要するに長時間労働を望んでいるのではなく低すぎる賃金に不満を表明しているのである。

(3)働き方改革関連法案は19年5月から順次施行されており、5年ごとに見直すことになっている。したがって26年度が裁量労働制拡大反対闘争のヤマ場となることが予想される。
 日本は世界的にも有名な長時間労働、過労死大国である。これ以上の長時間労働、ましてや残業代ゼロで働かせ放題など、決して許してはならない。
 さらに、彼らの究極の狙いは労働基準法の解体にある。とくに1日8時間、1週40時間という原則そのものが気にいらないのだ。法に縛られず、経営者と労働者の間で労働時間を自由に決定できるのが彼らの「理想」だ。逆に、労働者と労働組合はたえずこの労働基準法の原則に立ち返り、規制の緩和ではなく、経営者と資本家に対する監視と規制の強化を要求していく必要がある。
 幸いにも「裁量労働制」と「労働時間規制緩和」の問題では連合も明確に反対している。「雇用共同アクション」は、昨年1月からの労政審での労働基準法見直し(=解体)に反対し、意見書提出と反対行動を展開してきた。さらに高市政権の「労働時間規制緩和」の中核に「裁量労働制拡大」が据えられる中で、「裁量労働制拡大」を個別の労使で自由に決められる仕組みづくりに強く反対して、組合内での学習活動と抗議行動を強化している。
 「雇用共同アクション」を中心とする闘いに合流し、政府・経団連の労働強化策を葬り去ろう!


(倉)

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