戦争国家化への人民監視・治安弾圧推進法
「スパイ防止法案」を許すな

 自民党が高市早苗総裁を選出したことで、再び改憲策動と治安対策強化が前面に出る危険性が浮上している。特に、維新・国民・参政を取り込んだ「緊急事態条項」の提出、報道統制など予防的言論統制への警戒が必要だ。

 10月の臨時国会で、「スパイ防止法案」が持ち込まれる可能性が高まっている。高市新総裁は、総裁選公約で「スパイ防止法制定に着手」を掲げた。今年5月、「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」の会長として「スパイ防止法」制定を求める提言書を自民党執行部に提出した。「鹿を足で蹴り上げるとんでもない外国人がいる」とデマで排外主義を煽り、権力的情報統制・弾圧を仕掛けてきた張本人だ。

自・維・国・参が「スパイ防止法」を競って準備

 「スパイ防止法案」は、治安対策を口実に人民大衆を監視し、運動の取り締まりと弾圧を進めるための法案だ。自民と維新、国民、参政の各党が、国会上程を競い合っている。

 国民民主は、「G7諸国と同等レベルのスパイ防止法」を参院選公約に入れ、すでに「検討チーム」で中間報告案をまとめている。維新も、「国内でのスパイ活動を包括的に防ぐ法律」制定を求める検討タスクフォースの中間論点整理案を公表している。参政党の神谷代表は、「極端な思想の人たちは(公務員を)辞めてもらわないといけない。これをあぶり出すのがスパイ防止法」などと「共産主義者の排除」を公言した。臨時国会提出に向けプロジェクトチームを設置した。与野党による悪法提出競争を許してはならない。

安倍政権以降の相次ぐ情報・言論統制法

 法案内容は、現段階でまだ明らかではない。しかし、1985年の中曽根内閣当時に廃案となった「国家秘密スパイ防止法」を土台にしていることは間違いない。

 第2次安倍政権以降、政府は堰を切ったように、「特定秘密保護法(2013年)、共謀罪法(2017年)、経済秘密保護法(2024年)、能動的サイバー法(2025年)など、国民を監視する憲法違反の悪法を次々と制定してきた。その上に新たに「スパイ防止法」を画策する理由は、既成立の4法では実現できなかった目的が存在するからだ。安倍政権の後ろ盾となった統一教会(国際勝共連合)は、40年前にも「全国民に国家に対する忠誠心を問う法律」として「スパイ防止法」制定運動を展開し、現在もその活動を継続している。

 2013年の「特定秘密保護法」により、1985年の「国家秘密スパイ防止法案」の大半の目的は実現させられた。「保護法」は、「国家機密事項漏洩」の処罰対象を既遂行為だけでなく未遂行為、機密事項の探知・収集など予備行為から過失まで広げている。ただし、反対世論で、政府の違法行為の秘密指定を禁じ、「適性評価」においても政治的な信条や労働組合の活動歴などを調査してはならない等を盛り込んだ「運用基準」を勝ちとっている。参政党は、まさにここに噛みついて、公務員の思想信条を調査して「レッドパージ」を可能とする法律の制定を要求している。国民民主と維新は、内閣情報局と関連機関を統合した米CIAのような「中央情報機関」の設置を要求している。

 1899年に制定された軍機保護法は、対中国全面戦争に入った直後の1937年8月、全面改定で軍事機密の対象範囲が拡大され刑罰が強化された。このことを想起し、戦争体制と「スパイ防止」の一体性を警戒しなければならない。

排外主義と「非国民」あぶり出しによる戦争準備

 不安定な雇用と低賃金、物価高の中で、生活が困窮し将来の改善が見込めない現実が多くの人々を苦しめている。その不満や怒りは本来、政権政党と大儲けをしている独占資本に向けられるべきものだ。しかし政府・支配層は、怒りの矛先を中国と永住者を含む日本在住の外国人に向かわせる意図的なプロパガンダを展開させている。これに反対する運動や個人を「敵」として攻撃する差別・排外主義イデオロギーの浸透をはかっている。

 与党と一部野党が、こぞって「スパイ防止法」を要求し、「日本人より外国人を優遇」「外国人投資と移民政策による日本乗っ取り」など、デマと誹謗中傷で排外主義を煽り立てる現状はきわめて危険だ。その矛先は、生活支援と権利擁護に取り組む労働運動やNPO、反戦平和の市民団体にも向けられている。戦争国家化に敵対する者への弾圧法「スパイ防止法」を許してはならない。


2025年10月7日
『コミュニスト・デモクラット』編集局

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