現在開かれている通常国会は、この国の重大な岐路となる。安倍政権でもできなかった軍事化と反動化に大きく踏み出すことを許すのか、歯止めをかけるのか、決定的な分かれ目となる。
なぜ分岐点なのか。第1に、「安保3文書」が、戦後日本の国家のあり方、曲がりなりにも維持してきた「専守防衛」を破棄し、対中戦争の先兵になろうと軍事外交政策を根本的に転換するものだからだ。第2に、この大転換を許せば、今夏以降、岸田政権は「戦争放棄」の憲法9条をはじめ憲法そのものの改悪を狙うだろうからである。そして第3に、安倍や菅政権でさえできなかった新たな原発推進、首切り、入管法改悪など反動政策を一気に推し進めようとしているからである。
世論喚起と大衆運動で翼賛ムードを突き崩そう
岸田政権の支持率は依然として失速寸前の危機的状況にある。次から次へと不祥事が起こっている。岸田は施政方針演説で、2カ月で4人の閣僚が辞任に追い込まれたことに一切触れず、統一教会にはごくわずか言及しただけで、幕引きを目論んでいる。
岸田首相は、自分の演説原稿を書いていた荒井首相秘書官を、同性婚についての差別発言で解任せざるを得なくなった。岸田は「政権の方針と相容れない」と語ったが、そんなことはない。岸田自身が、選択的夫婦別姓や同性婚を認めると「社会が変わってしまう」と答弁している。「LGBTには生産性がない」などの差別発言を繰り返していた杉田前総務政務官を起用したのも岸田だ。ここまで来ると、差別発言の連発は内閣の体質そのものと言われて当然だ。
にもかかわらず、なぜ国会審議は緊迫感がないのか。まず第1に、野党第一党の立憲民主党を含む野党が今国会を「安保3文書」撤回で対決しないからだ。これら野党の反中・嫌中姿勢、「中国脅威論」が対中戦争と真正面から闘えなくしている。
第2に、自民党は「安保国会」にさせないために、突然「少子化」対策を打ち出し、今国会を「子ども国会」にしようと持ちかけ、立憲など野党がこの土俵に乗ったからだ。自民が本気でやるつもりはないのに、対決国会ではなく提案国会になってしまっている。看板だけ掲げて4月の統一地方選挙で国民を騙し、具体策は6月だと言う。まんまと自民の策略に引っかかったのだ。出てくるのは「児童手当の所得制限」「N分N乗」といった小手先の話ばかりだ。少子化の根底には、非正規雇用の増大、異常な長時間労働とサービス残業、女性に対する雇用差別、異常に高い教育費・住宅費など、政府・財界が推進してきた反労働者的政策全体があるのに、このどれにも全く答えようとしていない。自民の「少子化対策」にはもう一つの狙いがある。それは軍事費のためでなく「少子化対策」のためと称して消費税増税への道を掃き清めるものだ。われわれはこの土俵に乗ることそのものに反対である。
第3に、さらに自民党は維新の会と結託して立憲を抱き込み、立憲ー維新の会共闘を作らせ、野党共闘の復活を阻止している。多くの野党はコロナ5類への引き下げにも賛成だ。統一教会問題でも、細田の「懇談」で幕引きを狙う自民に、維新の会と国民民主は「一区切りついた」と加担している。また自民は連合を抱き込んでいる。連合は、昨年に続き新年交歓会に岸田を招いた。芳野会長ら執行部指導部は、公然と政府・自民党にすり寄り、野党共闘潰しの急先鋒となり、労働者ではなく金融資本を代弁する階級協調路線を強めている。
しかし、昨年後半急落した岸田政権の支持率は、年が明けても低迷している。世論調査によっては微増しているが、過去最低となった調査もある。特に、個別政策への支持は低い。朝日新聞の調査では、経済政策に「期待できる」20%・「期待できない」73%、少子化対策に「期待できる」20%・「期待できない」73%、経済政策が賃金引き上げに「結びつく」17%・「そうは思わない」は74%、といった具合だ。軍事費を5年総額43兆円に増やすことには「賛成」44%・「反対」49%と割れているが、軍事費のための増税にも国債発行にも圧倒的に反対が多い。野党の姿勢と世論は乖離しているのだ。世論と人民大衆に、もう一度、今国会の歴史的な意義を訴え、翼賛ムードを押し返そう。
対中戦争準備の「安保3文書」を撤回させよう
今国会の最重要の対決点は、「安保3文書」、対中国の戦争準備と大軍拡だ。岸田政権は、昨年12月に「安保3文書」改定を閣議決定して中国を明確に「敵」と位置づけた。前年度比1兆4214億円、26%増の軍事費を盛り込んだ予算案を決定した。これらを手土産に、岸田は1月9日から仏・伊・英・加・米の帝国主義諸国を歴訪し、「敵基地攻撃能力」=先制攻撃力の保有と軍事費の対GDP比2%を説明して回った。国会での議論も一切ないまま、帝国主義による中国包囲網と戦争準備を先頭に立って表明、つまり先兵となって戦う立場を国際的に表明したのである。「安保3文書」を撤回させ、戦争準備を阻止することが、何にもまして重要になっている。
次に、この戦争準備のための大軍拡への第一歩となる2023年度予算案だ。軍事最優先、軍事にすべてを従属させる、戦後日本で例を見ない異常な予算案となっている。今国会には、予算案のほか「防衛費財源確保法案」も提出される。外国為替資金特別会計からの繰り入れや新型コロナ対策資金からの国庫返納などでかき集めた資金を、24年度以降の軍事費として確保しておくという前代未聞の法案だ。予算全体では前年度比6兆8000億円増だが、軍事費とこの法案による「防衛力強化資金」だけでその大半の4兆8000億円を占める。今後5年間の軍事費総額は43兆円に上り、現行水準からの増加分だけで16兆円にもなる。国民1人あたり年間2万6000円、4人家族で10万4000円負担させられる。その負担は、増税や生活関連予算の削減、さらなる国債発行という形で肩にのしかかってくる。23年度予算案でも、社会保障予算の自然増5600億円が4100億円に圧縮され、年金支給額が「マクロ経済スライド」で物価上昇よりも伸びが抑えられるなど、生活へのしわ寄せが現れている。日本の軍事国家化を止めるためにも、生活を守るためにも、23年度予算案と「防衛力強化資金」法案の成立を阻止しよう。
原発推進への大転換反対原発60年超運転反対
岸田政権は、軍事のみならず、エネルギー政策においても、安倍政権をしのぐ反動路線に踏み込んでいる。原発再稼働、老朽原発運転年数の大幅延長、「次世代型原発」によるリプレースなど、原発推進への大転換だ。今国会には、運転期間を60年超に延長できる原子炉等規制法の改悪案も提出される。春から夏にかけては、福島原発事故による汚染水の海洋放出を、反対の声を押し切って強行しようとしている。この原発推進への大転換を阻止することも、重要な課題だ。
雇用流動化=首切り自由化に反対しよう
岸田は年頭の記者会見で、第1の課題として、「新しい好循環の基盤の構築」を掲げ、そのための「リスキリングの支援」「職務給の確立」「成長分野への雇用の移動」を三位一体で進め、「構造的な賃上げ」を実現することを挙げた。労働移動を実現するための指針を6月までに策定するとした。「リスキリング」「労働移動の円滑化」は、1990年代以降の新自由主義的な労働者攻撃の集大成であり、米国型の首切り自由化政策に他ならない。それは同時に低賃金構造を一段と拡大するものだ(第100号主張「首切り自由化政策に反対しよう」)。
岸田政権の暴走をとめよう
岸田政権の反動化はとどまるところを知らない。その一つが入国管理法改悪案だ。難民申請中は強制送還が停止される規定について、3回目の申請以降は原則適用しないとするものである。マイナンバー法改悪案、日本学術会議の組織改革関連法案も提出しようとしている。
岸田政権は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけについて、現在の「2類相当」から「5類」への引き下げを、5月8日に行うことを決定した。コロナの5類への引き下げは、コロナ感染を増やし、把握できなくし、一層の医療破壊をもたらすものであるのと同時に、ワクチンや診療の有料化、様々な支援の廃止によって、低所得層を医療から排除するものだ。
国会審議と4月の統一地方選・衆参の補選に向けて、岸田政権の対中国の戦争準備と大軍拡、反動政策に反対し、生活を守る運動を足元から作っていこう。それによってこそ、野党にも圧力となり、国会内の翼賛ムードを変えることができる。特に、生活悪化を放置しての軍事費急拡大は、岸田政権の最大の弱点だ。欧州では「カネは戦争マシーンではなく、我々のために」などのスローガンを掲げて、労働者人民の生活を守るための切実な闘いが展開されている。軍備のためにさらに税金を払い、自分の生活を犠牲にするのでいいのか。それとも平和外交で緊張関係を緩和し、軍事費を減らし、生活を守っていくのか。このことを人々に訴えていこう。
2023年2月7日 『コミュニスト・デモクラット』編集局